憧れの小笠原航路


バードウォッチャー憧れの海鳥の宝庫、小笠原航路での探鳥記録であります。のんびり鳥見ングがモットーという軟弱派バードウォッチャーの私ですが、文中にあるように、このときばかりは孤軍奮闘、いつになくがんばって観察を貫徹(?)しました。


8月16日(航海1日目)

10:00AM東京竹芝桟橋をおがさわら丸出航。空港がない小笠原への交通手段は、この船1隻のみだ。2日かけて父島まで行き、3日停泊してまた戻ってくるという繰返しで1カ月5便だから、いっぺん出たが最後、親が死んでも6日後にしか、帰ってこれない

さあ、去年、三宅島航路で見逃した、トウゾクカモメや、オーストンウミツバメ、カンムリウミスズメ、アホウドリ類を見てやるぞと闘志を燃やす・・・が、東京湾では別に何も出ないだろうとさっさとお昼寝。うーむ困った性格だ。 3時間後、東京湾を出たあたりで起きて、鳥見開始。しかし、甲板を1周して、恐ろしい事実に気がついた。
この1000人乗りの船でバードウォッチングをしている人間は、私ただ1人なのだ。こりゃ、三宅島航路みたいに、他のバードウォッチャーが騒いだ時にだけ鳥を見るという「他人のふんどし作戦」がとれない。これは気合を入れて、見るしかないのである。ま、こんなこともあろうかと、図鑑は、フィールドガイド、そして豆腐さん推薦の保育社の写真入のもの、とどめは、高野先生の「野鳥識別ハンドブック」と4冊用意してあるし、あらかじめ出そうな鳥の特徴をピックアップしたカンニングペーパーも作ってきてあるのだが。他に頼る人がいないだけに、こんなに真剣に鳥を見たのは、今回が初めてではないだろうか。

で、三宅島あたりまで、見ていたんだけど、ときどき雨まじりで風も強く、長袖、長ズボンでないと寒い、寒い。それに、この船自慢のフィン・スタビライザーたらなんたらゆう装備で揺れないはずが、よく揺れる。後で聞いたところ、現在、その自慢の装備が故障中だそうな。ンなアホな。 というわけで、三宅島をすぎたあたりで撤退。船酔する前にさっさと寝る。結局、1日目で見られたというか、確実に識別できたのは、オオミズナギドリ以外は、ハイイロミズナギドリオーストンウミツバメだけ。

8/17(航海2日目)

4時半、起床。今日は昨日とうってかわってとてもいい天気で、あったかい。結局、父島まで10時間近く、ずっと甲板で鳥を見てしまった。結構居眠りしてた時もあったけど、こんなにがんばって鳥を見たのは初めて。母島航路を併せると12時間の鳥見、自分でも感心してしまう。

この日は、この海域だったら普通に見られると図鑑に書いてある鳥は、大体出て来てくれた。浮島で東京のKさん夫妻からレクチャーを受けたオーストンウミツバメ、アナドリ、クロウミツバメの識別もOKだ。クロウミツバメは、羽の先の斑紋、色あい、飛び方で問題なく識別できる。問題は、アナドリと、オーストンウミツバメだ。図鑑では尾の形でたやすくわかるようなことが書いてある。しかし、オーストンウミツバメの尾が切れこんでいるというのは、近くならなんとか分かるが、アナドリの尾の先がくさび形をしてるというのは、もう鼻の先ぐらいの至近距離を飛んでくれないとわかんないぞ。オナガミズナギドリでも、クロアジサシについても言える事だけど、くさび形の尾って私には図鑑の絵の通りには、なかなか見えない。 K夫妻の話だと乱暴に言えば、1日目の三宅島近辺で出るのがオーストン、2日目の小笠原近辺で出るのがアナドリと思ってたら、いいんじゃないということだったけど、小笠原にもオーストンが結構いたもんね。しかし、ええかげんな私にも識別できたのは、この日が終日、晴天、順光、そして近くに鳥が寄ってきてくれたという好条件が揃ったためで、曇や逆光だと、体の色や羽に出る斑紋が途端にわからなくなってしまう。

この海域の主役はオオミズナギドリに変わってオナガミズナギドリ。船の後を追っかけてきてくれるはずのアホウドリ類は全く姿を見せず。カンムリウミスズメやトウゾクカモメ類にもまたもやふられちゃった。やっぱり夏は無理かなあ。ひょっとして、昨日、船室で寝てたときに出てたりして。
あこがれのカツオドリは、島が近付くと、出るわ出るわ、まるで小笠原のカモメやね。まだ営巣中で、そこらへんの島に真っ白な幼鳥も一緒に見える。船にしばらくついてくる奴もいたけど、近付くとさすがになかなかの迫力。

父島に到着して、ははじま丸に乗り換えて、また2時間の航海。カツオドリはたくさん出たけど、後は、パッとせず。シロハラミズナギドリは1回姿を見せただけ。クロアジサシは飛んでるのも、港でブイにとまってるのも両方見られて満足。でも、思ってたより出てくる鳥の数は少ないなあ。

17:30、東京から30時間の航海を経て、母島到着。父島に比べると、農協、漁協の他には商店はよろず屋さんが1軒だけというとても素朴な島だ。 聞いてた話では、メグロは早朝しか集落にいず、後は3時間程かけて山登りしないといけないという。明日は山登りかと思いながら、民宿に向かっていると、道端にパパイヤの実をつついてる鳥が。ありゃ、メグロだ。母島上陸後、最初に出会った鳥がメグロとは。なーんだ、いとも簡単に見られるぢゃないか。
夕食後、集落を散歩する。メジロがやたら多い。ハイビスカスの蜜を吸ったりパパイヤの実を食べたりするところがさすが小笠原のメジロだ。その次に多いのがイソヒヨドリ。あちこちで、美しい鳴き声を披露しているがヒヨドリよりも数は多いし、目立つ。

民宿は、ガイドブックに載っていた宿に断られ、替わりに紹介してもらうという去年三宅島で経験したのと同じパターンだが、今回もまた大正解。食事は品数も多いし、今とれたはかりのカツオが出るなどグー。若旦那もなかなか鳥や自然に詳しい。岩本久則大先生も利用されたそうである。冷房がないのが玉にキズだけど、わざわざ好きこのんで暑い所に来てるんだから、暑いと文句を言うのも筋違いというもんだ。

8月18日(母島)

第1目的のメグロがいとも簡単に達成できたので、今日は山登りをやめてあっさり観光モード。船で平島という無人島へ連れて行ってもらう。残念ながら、Tバックギャルはいないが(ハイレグ止まりね)ここには裸足で歩ける奇麗な砂浜もあるし珊瑚礁の海岸もある。熱帯魚と一緒に泳いだり、磯遊びを楽しみ帰りは、島めぐり。あちこちの無人島にカツオドリが子育てをしている。黒い親と白い雛が対照的だ。その中の一つの島に観光客が上陸していて、カツオドリと雛に近付いてパチパチ写真を撮ってるとこがあったけどうらやましさ半分駄目ぢゃないかという気持ち半分、ちょっぴり複雑。

鰹鳥島の向い側、母島南端の南崎で、船頭のおじさんが向こうを指さして私に何か怒鳴っている。「アホウドリ!」見ると断崖にどでかい白い鳥が。羽の部分は黒い。ありゃコアホウドリだーっ!!。図鑑の記述ではカツオドリと全長が10cmしか違わないけど、すごくでかく見える。あまりにも大きく見えたので、ひょっとして南崎にコアホウドリの模型でも置いてません?と帰って宿で聞いてみたぐらいだ。繁殖時期でもないのに、コアホウドリが島にいるってことがあるんだろうか?ちょっと休憩してたのかな?太平洋上で出会わなくてがっかりしていたけど、まさか島で見られるとは思わなかった。

8月19日(母島)

小笠原諸島には固有種のメグロに加えて、固有亜種が5種いる。オガサワラヒヨドリ、オガサワラハシナガウグイス、オガサワラカワラヒワ、オガワワラノスリ、アカガシラカラスバトだ。これを全て見るのも今回の目的だった。これを見るために3、4時間かけて山登りすることを覚悟していたのだが、なんのことはない。前3種はそのへんの家の庭で、ノスリとカラスバトは、宿から10分ほど坂を登った標高100mの小高い山の上から見ることができた。つまり集落から1歩も外へ出ないで、固有亜種5種とも見ちゃった。ラッキー。

この日は午後から母島に別れを告げ、一旦父島に渡る。ははじま丸から見る海鳥の顔ぶれは、往路とかわりばえしない。父島では、みやげ物を買ったり絵葉書を書いたりで、後は、おがさわら丸の復路にかけ、鋭気を養う。

8月20日(復路1日目)

12時、父島出航。 さあ、今日は1日甲板でがんばるぞと思ったが、途中、何回かスコールが来て、その間は、また昼寝。往路は、主にミズナギドリ類中心に海面を見ていたが、復路は、まだ見てないアジサシ類、アホウドリ類狙いで、海面より上を重点的に探すようにする。 しかし、今まで見た鳥しか、出て来ない。おかしいなあー。私のシナリオではクロアシアホウドリが船に興味を持って、船尾をずっと追いかけてくるはずなんだけどなあ。

カツオドリは、飽きる程出てくる。と、水平線に、おや?というのが1羽。直線的な飛び方、羽ばたくと黒色と白色がフラッシュに見える・・・セグロアジサシかな??と思ってるうちに見えなくなった。こりゃ保留だ。そしてお次は、船首を横切っていくアジサシ。今度は、羽が灰色だ。大きく見えたからオオアジサシかしらん。しかし、決め手に欠け、これも保留。今日は、5時間は甲板に出ていたけど、収穫全くナシ。これで小笠原海域とはさよならだから、セグロアジサシやオオアジサシ、セグロミズナギドリ出現の可能性はなくなったかな。明日の珍客及び、アホウドリ類にかけよう。船から見る海上の日没はすばらしく美しい。

8月21日(復路2日目)

6時起床、今日が最後のチャンスだ。船尾を見るが、クロアシアホウドリはついてきてない。おいおいちょっと話が違うぞ。 そのかわりついてきたのがイルカの群れ。船と競争するように、見事なジャンプを披露しながら、しばらくついてきて、船の上から拍手喝采を浴びていた。イルカって芸を仕込まなくても、普通にジャンプができるのね。
八丈島、三宅島と過ぎるが、新たに出たのはシギSPだけ。海の上飛んでるシギなんかわかりっこないやい。自慢ぢゃないがわたしゃ目の前にいるシギさえ、識別に自信ないんだから
八丈島あたりから、海にゴミが目立ち始める。東京湾の手前辺りではゴミの海流、東京湾の海は、もうドブね。 午後になって、房総半島沖に来ても、なんにも出て来ない。いつもなら、ここであきらめて昼寝に行くところだけど、ええい、ヤケクソぢゃ。とことんつきあってやると、今日は、竹芝桟橋まで10時間甲板で鳥見を続ける

東京湾手前で、波間に浮いてるヒレアシシギ発見。残念ながら、赤くないから冬羽だ。アカエリかハイイロかどっちかなと図鑑を開いてガーン。冬羽だと、ほとんど同じぢゃないか。3種の図鑑を駆使して、悩む。東京湾手前で、バラバラに数羽、東京湾内で群れをいくつか見たのだが、両者は明らかに違う。結局、東京湾外で見た数羽をハイイロヒレアシシギと勝手に断定。こっちは、近くで割とじっくり見ることができたのだが、頭部は過眼線以外は白く、背中も白っぽくて全体的にコントラストが淡い。保育社の図鑑の写真と一緒だ。東京湾に入ってから見たいくつかの群れは、背中が褐色っぽく線も見えたので、アカエリヒレアシシギとした。ま、こんなもんでしょ。ただ、湾内で見たもののうち、飛び立つときピピッピピッと鳴いたのがいたけど、ハイイロかしらん。鳴き声については図鑑によって記述が違うぞ。
あと、東京湾内で、茶色い中型のシギSP、ウミネコ、アジサシ、コアジサシと数を稼いでいくうち、最後に、千葉方面からビッグなプレゼント!!ジャーン!!船のすぐ前を横切る、ズグロカモメが帽子をかぶったようなアジサシ!!出ました、これまた浮島でK夫妻からレクチャーを受けた、噂のBlack Tern(ハシグロクロハラアジサシ)ではないの。冬羽だったけど、これって、翼のつけねの斑が何よりの特徴。止まってるときはわかんないけど、飛んでるときにはすぐわかるのね。これは、儲けたぞ。バンザーイ。
というわけで、16時30分、竹芝桟橋到着。 今回の小笠原行き、初めて見た鳥(亜種を除く)が航路で9種に、母島2種、しめて11種。見られて当然なものが見られなかったというのもあったけど、ま、いつになく、一人でがんばったということもあって、満足すべき結果だとしよう。

東京〜小笠原航路(竹芝桟橋〜父島〜母島往復)1993.8/16〜21

シロハラミズナギドリ、アナドリ、オオミズナギドリ、オナガミズナギドリ、ハイイロミズナギドリ、
オーストンウミツバメ、クロウミツバメ、カツオドリ、ウSP、シギSP、ハイイロヒレアシシギ、アカエリヒレアシシギ、ウミネコ、ハシグロクロハラアジサシ、アジサシ、コアジサシ、クロアジサシ、アジサシSP(セグロアジサシ?&オオアジサシ?)ハシブトガラス、

《番外》イルカの群れ


小笠原諸島、母島:1993.8/17〜19

コアホウドリ、シロハラミズナギドリ、アナドリ、オナガミズナギドリ、カツオドリ、オガサワラノスリ、クロアジサシ、アカガシラカラスバト、オガサワラヒヨドリ、イソヒヨドリ、オガサワラハシナガウグイス、メジロ、メグロ、オガサワラカワラヒワ、

《番外》アフリカマイマイ、ムラサキオカヤドカリ、オガサワラトカゲ、オガサワラヤモリ、グリーンアノール、オオヒキガエル、アオウミガメ、オオイワガニ、パイプウニ、オガサワラノラネコ


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