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北海道の霧多布(きりたっぷ)半島は、文字通り霧が多いところだ。その先端の湯沸岬の崖っぷちに座って待っていると、霧の中からエトピリカが現れる。向かい側の崖に営巣しているのだ・・・といっても十数年前の話だが。岬の入り口には気のいい姉妹がやってたラーメン屋があったけど、まだあるかなあ?それもエトピリカと一緒に姿を消したのだろうか。アイヌ語でエトが鼻、ピリカが美しいという意味。地元の漁師は「花魁(おいらん)鴨」と呼ぶ。時々、網にもかかるそうだ。 |
| 翌日民宿のおやじさんに、昆布漁の船で無人島の嶮暮帰(けんぼっき)島へ連れて行ってもらった。ムツゴロウ一家の住んでいた家がわりの船もまだ残っていた。その帰り、今晩のおかずになる花咲ガニや毛ガニを蟹カゴから回収していたときのことだ。おやじさん曰く「あのへんに花魁鴨落ちてくるべ」・・・なんでそんなことわかんねんと半信半疑でいたのも束の間、ホントに霧の中からチャポンとエトピリカが落ちてきたのだ。 | ![]() |
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おやじさんは、こんなもん何が珍しいねんというような顔をしていたが、私はもう興奮の極み。前の日、湯沸岬で見たとはいうものの、まさかこんな目の前でエトピリカを見ることができるとは思いもしなかったからだ。当のエトピリカは、船の上で騒ぐ我々を全く気にせずしばらくプカプカ浮いていたが、突然二声、三声鋭く鳴いたかと思うと飛び立ち、また霧の中へと消えて行った。エトピリカには、なぜか、霧が似合うなあ。 |